『ザ・リッツ・カールトン』のサービス精神について

日本最高峰のサービスはどこから生まれるのか?

昨夜テレビ東京の「ガイアの夜明け」で、ホテル「ザ・リッツ・カールトン東京」のオープンにちなんだ特集が組まれていた。
ザ・リッツ・カールトン東京」は先頃オープンした東京ミッドタウン内にテナントを構えるホテルである。なんでも「J.D. パワー アジア・パシフィック」が調査した国内ホテルの顧客満足度調査によると、2006年の高級ホテルのカテゴリーにおいてNo.1の座に輝いたという。つまり、日本一のサービスがここにはあるとも言える。
番組の構成は、リッツカールトンに今年入社した新入社員の研修、そして初めての接客に至るまでのドキュメンタリーだった。彼らの研修の様子を知ることは、リッツカールトンのサービスの本質を垣間見るにはまたとないシチュエーションである。業界は違えど、同じ新入社員という立場で年齢も近い彼らの懸命な姿は、思わず感情移入してしまう。この番組で印象に残った点をいくつか紹介したい。

このホテルで働く従業員全員には、勤務中常に「クレド(credo)」という小さな四つ折のカードを携帯しているという。ここにはリッツマンとしてのサービスの基本精神が書かれていて、働くもの全員が共有する理念となっている。特に印象深かったのは、フレーズを引用したい。

リッツ・カールトンでお客様が経験されるもの、それは、感覚を満たすここちよさ、満ち足りた幸福感そしてお客様が言葉にされない願望やニーズをも先読みしておこたえするサービスの心です。

「願望やニーズを先読みして提供する」。確かに我々も普段から期待した以上のサービスを受けたとき、また思いがけないサービスを受けたときは、自然といつもよりも嬉しい気持ちになるものだ。まさに至極のサービスとはこういったところにあるのかと関心させられてしまった。
また、従業員がこれを実行しやすいような環境もある。驚きだったのが、直接お客と接する従業員は、もてなしのために必要な金銭であれば20万円まで決裁なしにそれを行使できるという制度。考えてみれば一番お客と近い位置にいて、一番細かな心情を汲み取れるのは直接接する従業員である。そこにこのような裁量が与えられれば、それこそ「お客様一人一人」に合わせた心の通ったきめ細やかなサービスが提供できるということだろう。
その分従業員も型にはまったサービスではなく、常に自分の頭で行動し、選択していく器量が求められる。こういった環境では従業員も思考停止することなく常に自分の仕事を振り返り、それを向上させていくだろう。それは社員研修の様子にも表れていた。トレーナーは細かい事に口出しはせず、しっかりと新入社員の様子を観察しながらも「自分で考えて行動する」ことに重きを置いた指導を行っていた。(もちろん、それは放任主義とは異なるものだ)ただし、それぞれが勝手に行動するのではなく、そこには必ず『クレド』という基本意識が共有されている。
この辺に人的リソースを最大限に生かし、正のスパイラルに持ち込もうとするリッツカールトンの企業体制としての秀逸さも見て取ることができた。

ポイントまとめ
①「クレド(credo)」という共通理念:細かなマニュアルではない、あくまで意識としての規範
②「従業員個人の大きな裁量権」:迅速かつ臨機応変なサービス、従業員のプロ意識、仕事への満足感と責任感、あくなき向上心