モバゲータウンについて:mobidec2006

モバゲータウン」と呼ばれる携帯向けSNSが今、高校生を中心にして流行っている。mobidec2006ではこのモバゲータウンを運営する株式会社ディー・エヌ・エー守安功氏が講演を行った。

モバゲータウンとは何か?

モバゲータウンは2006年2月7日に正式スタートした携帯3キャリア対応のいわゆる勝手サイトである。5月以降は毎月25〜27万人ずつ会員が増加し、11月7日には会員が200万人を突破している。一日あたりの携帯サイトのPV(ページビュー)は約1億800万PVで主な携帯サイトの中で一位。二位のモバオク(6000〜8000万PV)、三位のヤフーモバイル(5200万PV)と比べても強さが際立つ。ユーザー層は高校生が中心で全ユーザーのうち19歳以下のユーザーが約7割を占める。
サービスの主な内容は無料ゲームやデコメ、SNS機能である。
提供しているゲーム数はお手軽なFLASHミニゲームが約30本、マージャンなどの本格的リアルタイム対戦ゲーム(ドコモのみ)が約10本となっている(講演時)。今後はFLASHミニゲームを週一本、リアルタイム対戦ゲームを月1,2本のペースで増やしていくとしている。
SNS機能はmixiなどにある基本的な機能(日記、コミュニティ、更新通知、メッセージなどの機能)に加え、現実の地図に仮想的な家を建てる「マイルーム」機能や、地図連動型口コミコミュニティなど、ユニークかつ携帯独自の強みを生かした試みも行っている。

集客と定着の二段階構造

モバゲータウンはどのようにしてこの短期間で200万の会員を集め、活動的なサイトに成長させることに成功したのだろうか?その秘密は集客と定着の二段階のビジネスモデルがあると私は考える。
現在SNSを単に提供するだけでは、特に後発のSNSは人を集めるのは厳しいと言われている。SNSでは様々な要因により先行の利が顕著に影響するサービスだからだ。例えばPCで世界最大の「My Space」は招待なしでの登録を可とし、音楽を大きな強みとして据えることで先行の「Friend Ster」を追い抜かしていった経緯がある(もちろんそれだけが要因ではないが)。
第一段階としてモバゲータウンは「My Space」がやったことを携帯SNSの世界で行った。ただし音楽ではなく、10代、特に男子に人気の高い「ゲーム」と女子に人気の高い「デコメ」を利用してである。日本では携帯でゲームをしたり、絵文字を使って頻繁にメールをしたりする文化と端末が揃っており、導入も比較的簡単である。これらを考えると携帯サイトで無料でこれらサービスを提供することによりユーザーを集める戦略は非常に理にかなっていると言える。当然集客の窓口を広げ、招待なしでも入れる仕組みを作ったことで、初期から一気に会員を伸ばすことに成功した。
第二段階は集めたユーザーをいかに長く、そして活動的に利用させることができるかが課題となるが、モバゲータウンSNSの機能によってこれを実現した。ゲームランキング等からのコミュニケーションはもちろん、「マイルーム」や「アバター」などでユーザーの理想とする仮想的な人格形成を活性化させることで継続的な利用を促している。新しい服や家具がやればやるほどに充実していくところなどは、RPGでのレベルアップや買い物に近い感覚があり、こういったSNS内のゲーム的要素が10代の若者にヒットしているとも考えられる。そしてビジネスの種もこの辺に仕掛けられている。

「モバGがビジネスのキー」 −守安氏

モバゲータウンにはモバG(モバゴールド)と呼ばれる仮想通貨が存在する。守安氏が語ったようにこのモバGがモバゲータウンのビジネスモデルのキーになっている。
モバGを使うと「アバター」で髪型を変えたり、服を買ったり、時には整形もすることができる。また「マイルーム」の家具を買って自分の部屋をどんどん充実させることもできる。当然ユーザーは仮想的な自分と空間を理想に近づけるために必死でモバGを集めようとする。そこに収益の仕組みを作るわけだ。
モバGを貯める方法は現在以下の5つである。

  • 友人を招待したら300G
  • 広告をクリックしたら2G、
  • スポンサーサイトの登録
  • 姉妹サイト「モバコレ」などで買い物すると10円につき1G
  • ミュージックをDLすると30G

このように仮想通貨を直接買わせることで収益をあげるのではなく、集客や他のサイトとのシナジー効果を発揮させることで間接的に収益をあげる仕組みである。あくまで「仮想通貨」なので、現実で起こるトラブルのリスクも低減できるメリットもある。
モバゲータウンはターゲットをmixiなど大手SNSがまだカバーしていないティーンエイジャーに集中させ、ゲームやデコメなど魅力的なコンテンツを無料で配信することで成功したが、その影には集客×定着×収益の構造をひとつのサイト内で分担させるビジネスモデルの基盤が大きく寄与していたと思われる。
このモデルは今後の携帯勝手サイトを成功させる上でも重要なものとなってくるだろう。