不都合な真実

結構前から気になっていたが、実際映画館に足を運ぶまでには至らなかった映画『不都合な真実』を今日ふとしたきっかけがあり観ることができた。
何気にテレビのニュース等でも話題になったこともあり、知っている方も多いと思うが、この映画は元米国副大統領で、あの有名な接戦となったブッシュ現大統領との大統領選挙を争ったアル・ゴア氏が、地球温暖化を訴えるスライド講演を世界中で展開する姿を追ったドキュメンタリー映画である。
物語の展開は実際のゴア氏の講演映像を中心に構成されている。私がこの映画を観にわざわざ映画館まで足を運ばなかった理由のひとつとして、このような類の映像作品であれば、自宅でDVDを借りるなどしてみてもあまり変わらないだろうと思ったことが挙げられるが、それは大きな誤解であったということが今日わかった。
「生の臨場感」
映画館の大画面と重低音の効いた音響システムが、ゴア氏の熱い講演映像を生のそれと近い臨場感に再現している。(それにしてもさすが大統領戦を争った人物である。人を惹きつけるトークがうまいうまい。)
と、まぁ映画の評論はこれくらいにして本題に入ろう。

人類の危機感の欠如

人間は自分の目に見える範囲のことしかリアルに信じられない。しかもそれが『不都合な真実』であった場合なおさら目を背けようとする。
映画の中で印象的だったのが「蛙をお湯に入れたらどうなるか?」という話である。
蛙を熱湯の中に放り込むと蛙はすぐに危険を察知してそこから逃げようとする。しかし、最初は常温の水に入れてから火をかけ、だんだんと温度を上げていくと熱湯になっても気付かず、やがては死んでしまうというものだ。要するに今の人類はこの蛙と同じ程度の危機察知能力しか持ち合わせていないということを揶揄している。日本が戦争で核を落とされるほどの悲惨な目にあって初めて、戦争と核を放棄するに至ったのと同じように、人類は一度取り返しのつかないようなひどい目に合わないと、反省しない動物なのか。(それすらも一世代過ぎると忘れてしまうのだが)。
「決定的な危機感の欠如。」これがほとんどの人間の実態だろう。そりゃあもう戸愚呂弟に殺されかけてる幽助のごとき危機感の薄さ
地球温暖化問題」が、これでもかと言われるほど日夜メディアを中心に騒がれているというのに、世界中のどれほどの人間がその危機感をリアルに感じ取り、行動に移しているだろうか?そんな人は全体でみたら本当のごくごく少数だろう。その他の大多数の人間は、なんとなく頭の片隅にわかっていたとしても正面からは向き合ってない。あるいは明日の飯をどうするかといった状況で綱渡り生活をしている人々にとっては、温暖化を考えろと言うこと自体が酷である。(そもそも貧乏暮らしをしている人間は、何も意識せずともCo2を排出しないような生活を送っているものだ。)
私もそのような行動を起こさない大多数の人間に分類されてしまう一人であった。正確には、頭では理解しながらも半分以上あきらめていた人間である。
環境問題について考える機会はこれまで幾度となくあった。温暖化の実態とそれがもたらす恐怖は嫌というほど様々なメディアを通じて理解し、一時的な努力を試みはしたが、そのような小さな努力はまるで無視されたように進んでいく温暖化。世界一でダントツのCo2排出量を持ちながら京都議定書を拒み経済を優先する米国、かつて日本が歩んだような、環境無視の経済発展一辺倒の道をたどろうとする中国*1などの姿を見ていると、「ああ、こんなところで自分がいくらがんばっても、結局は何十年か後には取り返しのつかないことになってるだろうな」と意味ない達観をしてしまっていた。ただこうなると、もはや生きる希望がなくなるので「じゃあ忘れよう」という後ろ向きな結論に至ったしまっていたのだ。

まだ未来はある(ただし行動すればの話)

しかし、その考えは『不都合な真実』を観る前と後で180度変わった。
あの米国の中にもゴア氏のような本気でこの問題をなんとかしようと思っている人が数多くいることがわかったことは、自分にとっては驚きだったし、そして何より今一人一人が出来る努力と、人類の知恵を結集すれば今からでも温暖化の進行を食い止めること可能であると知れたことは大きい。(ゴア氏によるとそれぞれの対策努力によって予測されるCo2削減量を計算した結果、1970年代の水準にまで減らすことはすぐにでも可能らしい。)
我々にもすぐに始められることはたくさんある。例えば白熱灯の電球を省電力型の電球に変えたり、移動に公共機関を意識的に使うだけでもすべての人が実行すれば相当な削減につながる。あとは冷暖房の設定温度を2度緩めるとか、リサイクルを心がけるとか、本当に簡単なことで今の生活を維持しながらCo2は削減できる。エコって、実は経済的な行動だったりする。(ちなみに自慢じゃないけど自分は寒さには強いので冬もほとんど暖房つけません。以前それをネタにしたエントリーあり)→こちら
とりあえず私も明日から紙コップ使わないようにマイカップ持参して出社したいと思う。こうした小さな努力をしながら、虎視眈々といつか大きな事もしてやろうと画策中。というか、うちのオフィスの暑さはなんとかならないかなぁ。(冬はPCの排熱だけで何とかなるような気も・・さすがに無理か)

*1:追記ですが、最近になって中国もようやく国家的な環境対策の取り組みを推し進めていこうとする気運が見られはじめました。具体的なCo2削減基準などの枠組みについては不透明ですが、大きな前進です。