ひろゆき氏のインタビューにみる「ニコニコ動画」のWeb2.0的ポイント

YouTubeへの“輸出”も――ひろゆき氏が語る「ニコニコ動画」の今
ニコニコ動画」がクローズドサービスにも関わらず大人気だ。ニコニコで生まれたコンテンツがYouTubeに“輸出”されたり、「動画アンケート」「動画雑談」が行われたりと新しい文化も生まれている。運営は「赤字垂れ流し」だが、ビジネスの芽も見え始めた。(続く)

動画に字幕をつけて楽しめる動画投稿サービス「ニコニコ動画」が大人気だ。一日あたり約2000万PVを伸ばし、登録している会員数は70万人に達しているようだ。
ビジネスの面ではまだまだ「赤字の垂れ流し(ひろゆき談)」というが、ウェブサービスの基本である、「いかに多くのユーザーを集めるか?」に限って言えば完全に成功したと言って良いだろう。では、ニコニコ動画はいかにしてここまで多くのユーザーを獲得することに成功したのだろうか?以前このブログでニコニコ動画のおもしろさの本質については考察するエントリーを書いたが、今回はニコニコ動画Web2.0的な要素を、ひろゆき氏のインタビュー内容から考察していきたい。

ニコニコ動画成功のWeb2.0的ポイント


ニコニコ動画のトップページ、「陰陽師」「外山恒一」関連の動画が相変わらずの人気である。

ポイントその一 既存サービスと斬新なアイディアの組み合わせ(マッシュアップ

ニコニコ動画は以前YouTubeアメーバビジョンといった他の有名動画を自サイトに引き込む形で運営されていた。これによってニコニコ動画は莫大な維持費用がかかる動画サイトのサーバー代を負担することなく、サービスを始める事にこぎつけた。Youtube側に切られた今となっては、自社で「SMILE VIDEO」という動画投稿専用サーバを用意しているが、ここに投資が出来たのもある程度前段階でサービスの成功が見込めたからではないだろうか。ニコニコ動画はすでに世界中で人気のサービスに斬新なアイディアで付加価値をつける事によって、さらにおもしろいサービスに仕立て上げる事に成功した。

ただ、自前で動画サイトを持った場合の年間投資額を試算すると、ドリームジャンボ宝くじくらいになります。それでも自前で持とうと思ったのは「面白そう」とかそんな理由かな。

ポイントその二 サービス完成度よりもリリーススピードにこだわる姿勢(β版の理念)

YouTubeからのアクセス遮断、DDos攻撃と立て続けに災難に見舞われたニコニコ動画は、一度サービス停止の危機に追い込まれた経緯がある。ニコニコ動画のサービス基盤はYouTubeの上に成り立っていた部分が大きかったので、当時のユーザーの間では「これは閉鎖か?」と思った人も多かったはずである。しかし、驚いた事にたった1週間でサービスを再開することに成功した。

YouTubeから切られて、同時期にDDoS攻撃を受けて閉鎖が決まり、会議を開きました。その時、たまたまスタッフに、個人で動画サービスを作っている人がいたことが分かって、じゃあそれでいこう、と。その人はYouTube知らなかった、という微妙な衝撃もあったんですが(笑)。サーバは3営業日くらいあれば無理矢理なんとかなりそうということで、閉鎖の1週間後に再開することになりました。(ひろゆき氏)

ここまで早く再開できたひとつのは人数限定の「クローズドサービス」の形を採用したからだ。もし、以前のようなオープン型のサービスを開始していれば、一週間ではとてもじゃないがそれに耐えうるサーバーを工面できなかっただろう。

再開して、一斉に100万人が来てしまったりすると、誰も動画が見られなくなってしまいます。何をしていいか分からない場になって、ユーザーが離れてしまうのは避けたかったので、クローズドで負荷を抑えながら徐々に開いていっています。(ひろゆき氏)

サービスの完成度や利便性を100%満たしてから世に出すより、とにかくユーザーの熱が冷めないうちにすばやくリリースし、ユーザーを巻き込みながらサービス自体も徐々に成長させていく。そんなβの理念がそこには息づいている。(ニコニコ動画の表記はγ版としている)

ポイントその三 ビジネス展開は二の次、まずはユーザーに遊ばせるCGMサイトとしての姿勢

0円サービスが基本となるCGMは、会員の獲得→収益の増加には即結びつかないことが往々にしてある。いや、逆にトラフィックが増えてサーバー代がかさむ分、逆に赤字が増えることも珍しくない。(特に動画系のサービスはそれが顕著である)
冒頭にも書いたようにニコニコ動画はビジネス的にはまだ「赤字」であり、成功しているとは言いがたい。しかしユーザー獲得での成功をビジネスに結びつける「芽」が育つ土壌は十分に整いつつある。

ニコニコ動画がきっかけでヒットした「レッツゴー!陰陽師」が、親会社のドワンゴで着うたになり、ヒットし、着うたダウンロード数で宇多田ヒカルに次いで2位になったり、東京都知事選に立候補した外山恒一さんの演説も、ドワンゴが着うた配信するなど、着うたを活用したビジネスも広がってきているようですが。(記者)

このようにユーザーがニコニコ動画上で生み出した魅力的なコンテンツが、着うたの販売などに結びついている。今後は動画そのものの有料配信も行っていく予定だという。また、紙上では語られていなかったが、動画コンテンツを生かしたリッチ広告の提供などの形も見えてくるだろう。
ユーザーをたくさん集めれば必ずビジネスとしての成功が約束されるわけではないが、ユーザー不在のCGMが成功することはまずありえない。まずはユーザーに遊ばせ、そこで生まれる熱量をその都度最適なビジネスへと展開させる臨機応変な工夫が、CGM事業者には求められるのではないだろうか。