米Yahoo!とマイクロソフトに業務提携の動き

米国のGoogleAmazon、ebay、など主要ネット企業が次々と好決算を発表する中、一人苦しい状況が続く米Yahoo!が、IT界の巨人・マイクロソフト経営統合を視野に入れた業務提携交渉を続けていることが、4日の米紙ウォールストリートジャーナル(電子版)で明らかになった。

勝ち負けが明確に表れ始めた米検索市場

日本の検索市場においては依然としてYahoo!Googleを上回っているが、米国においては完全にYahoo!Googleに追い抜かれている状態にある。(下図参照)
両者の売上高を4半期ベースで比較すると、2004年までは拮抗状態にあったものの、2005年頃から伸び悩む米Yahoo!を尻目にGoogleはぐいぐい売上高をアップさせ、2007年の1Qには二倍程度の差が開いてしまっている。さらには、米Yahoo!にとって過去15四半期続いてきた売上高の記録更新が止まるという追い討ちも重なり、4月17日の決算発表後、同社の株価は急落した。
←2005年を境に徐々に差が開く売上高

Googleに危機感を募らせるMSとYahoo!


しかし最近になって、米Yahoo!の株価は急速なV字回復を見せた。米マイクロソフトYahoo!の買収に乗り出すのでは?という観測が流れたためだ。実際に両者は過去にも業務提携の交渉を行っており、今回の業務提携交渉も決して現実味がないわけではない。(しかし実際のところはYahoo!のトップにマイクロソフトに対し嫌悪感を抱いている人間もいるようで、大掛かりな合併買収までには至らないという情報もある)
ただ、こういった両者の動きからは明らかに米Googleに対する危機感が表れている。特に先日インターネット・マーケティング大手の「ダブルクリック」買収合戦の末Googleに敗れたMSのトップの苛立ちは相当なものだろう。
以下にasahi.comに掲載されている、GoogleCEOエリック・シュミット氏のインタビューの一部を引用する。

「このまま進むと、マイクロソフトやIBM、オラクルといった大手と正面から競争することになりませんか?」と尋ねると、「ノット・IBM、ノット・オラクル(IBMやオラクルとは競争しない)」と答え、微笑した。「マイクロソフトとは競う」という意味だ。

ここで例に出された「競争しない」企業でいえば、おそらくAmazonやeBayなども同時に含まれるであろう。一方、マイクロソフトとは競争関係になってしまうのは一体なぜか?それはGoogleとMSはひとつのサービスの競合といった狭い世界ではなく、今後のIT業界の大きな流れを決定づけるような根本的な部分での競合関係にあるからだ。これは梅田望夫氏の著書「ウェブ進化論」でいうところの「あちら側」と「こちら側」の戦いでもある。
「こちら側(リアル経済圏)」で栄華を極めたマイクロソフトは今、徐々に世界の動向の主流になりつつある「あちら側(ネット経済圏)」の主権をGoogleから取り返すことに躍起になっている。そして、「あちら側」の世界でGoogleに覇権を奪われた米Yahoo!とタッグを組んで巻き返しをはかる。Googleに危機感を募らせる米Yahoo!とMSの合併騒動には、MSのそんな思惑も見え隠れする。