イマドキ若者のケータイ事情

CNET Japan有識者コラムで、ドコモの村上勇一郎氏が「5分喋れば長電話」「お風呂でメールは当たり前」--今どき若者のケータイ事情 - CNET Japanなるエントリーを書いていた。今、若者の間では携帯がどのように使われているのだろうか?興味深い記述が何点かあったので、まずは要点をまとめながら考察していこうと思う。

ケータイのみでネットを利用する人口の増加


2006年に総務省が発表した統計資料(右図参照)によると、「PCのみからインターネットにアクセスする人(1585万人)」を、「ケータイのみからアクセスする人(1921万人)」が上回っている。その背景としては以下のことが挙げられる。

通信料を気にせず使えるようになったため、携帯からのネット使用に抵抗感がなくなった

  • 3G携帯の普及

パケット定額制対応機種の普及の他、通信速度も向上したことで以前よりはストレスを感じなくなった。また、テキストベースの殺風景なサイトが多かった以前に比べ、表現のリッチ化も可能にした。

  • 携帯専用サイトの広がり

勝手サイトの爆発的増加により、携帯で利用できるコンテンツやサービスがこの数年で飛躍的に伸びた。

  • PCサイトへの対応

最近ではPCサイトをそのまま閲覧できる携帯も多くなった。

  • 導入が簡単

筆者も今まで数人ほど友人のPCネット導入の手伝いをした事があるのだが、PCネット接続未経験者にとっては、「家にネット環境を導入する」行為が予想以上にハードルが高いと感じているのに気づいた。申し込みさえしてしまえばあとは業者に任せてしまえばいいのだが、まず回線選びの段階で「ADSLって何?」「光回線のプランが多すぎ」「回線工事?部屋に穴あけるのは嫌だ」などの混乱が生じ、その段階で一人ではあきらめてしまっていたという話だった。それに比べ携帯ならすでに持っている端末ですぐにネットができる。PCネット接続未経験者にとってはわざわざ頭を悩ますなら携帯の機能で十分といったところなのだろう。

このような流れは今後も加速して行くと見られ、携帯のみでネットを利用する人口はこれからも着々と増加していくことだろう。

若者の携帯事情

携帯のみでネットを利用する層の多くは「若者」である。その若者の携帯事情について村上氏の記事をまとめるとこうなる。

  • 5分以上は長電話

「通話=高い」「パケット通信=安い」という認識。

  • 場面で決める

待ち合わせ場所を細かく事前に打ち合わせするのではなく、大体の場所(例えば「渋谷に学校終わったら」等」)だけを指定しておき、実際の集合はその場の雰囲気や状況によって携帯で連絡をとり、決めていく。

  • 湯船でもメール、ネット

水が入らないようにジップロックなどで携帯をガードしながら、湯船で携帯を使う。中の空気を吸引するほどボタンが打ちやすいらしい。そこまでして使おうとする姿勢には頭が下がる。

  • メールの使用頻度は低下

著者の高校生、大学生前半ごろは、携帯の主な使用目的と言えばメールだったが、最近では若者のメール送信件数が減ってきているらしい。その代わりに使用頻度が増えているのがmixiやモバゲー、あるいは先日紹介したプロフなどのソーシャルネットワークサービスである。相手に直接働きかける「プッシュ型」から、SNSなどの更新通知機能が付加された「プル、プッシュ複合型」のサービスを利用する若者の増加により、コミュニケーションスタイルも、「1対1」から「1対多」にシフトしているのではないかと村上氏は指摘している。

  • コンテンツのつまみ食い現象

携帯ユーザーはスナック化されたサービスを好むという。具体例として村上氏は「ゲームならばロールプレイングゲームのような重厚長大型のゲームでなく、ライトゲーム、カジュアルゲームと呼ばれるミニゲーム、音楽で言うとアルバムよりシングル、デジタル楽曲ダウンロード等の1曲 1曲を好む傾向のことである。」という。
着うたに関しても、楽曲丸ごとダウンロードよりも、サビの部分だけで十分という意見が多いと言う。こういった若者の「つまみ食い」現象は、単に「飽きっぽい若者の性質」と言うよりは、情報過多の現代において若者が適応するために獲得した知恵なのかもしれない。

所感

イマドキの若者という表現をタイトルに使っているが、年齢的には筆者も一応「若者」の部類には入る年齢である。しかしこれまでどっぷりPC文化の中で育った自分にとって、現代の10代〜20代前半の携帯文化は年齢差以上の世代間ギャップを感じずにはいられない。今でこそ意識して携帯文化にも身を置こうと努力はしているが、それまでは携帯でネットなど「いちいちボタン押すのが面倒」「画面を全部見るまでスライドさせるのが面倒*1」「通信時間がイライラする」などネガティブなイメージのほうが付きまとっていた。あくまで携帯ネットはPCネットの補足的な位置づけであった。
しかし、最近では携帯のネット通信機能は日ごとに進化し、また携帯でしか実現し得ない独自の進化も遂げている。この変化をいち早くキャッチし、独自の利用法を確立するのもやはり若者だ。これまでに書いたような若者特有の携帯利用法には、次世代のヒットサービスのヒントが隠されていると言えよう。

*1:そういえばなぜ携帯にはスクロールホイール付き機種がほとんどないのだろうか?あれがあるだけでずいぶんと操作性が良くなると思うのだが・・・。