iGoogleが意味するもの【考察編】

iGoogleは我々のネット行動を根本から変える

「してやられた」と言うのが正直な感想である。
Googleはこれまでにも「Gmail」や「Google Map」、「Google Earth」など様々な斬新なネットツールを提供し続けてきた。しかし(検索を除き)自分にとってはあくまで“必要なときだけ利用させてもらう”ものに過ぎなかった。その証拠にGmailが登場したときも、すでにYahoo!で2GBのキャパを確保し、詳細な振り分けや迷惑メールフィルタ設定を施している状況で、あえて前者をメインで使う必要性は感じられなかったし、ブラウザのスタートアップページは相変わらず「My Yahoo!」を重宝していた。国内ポータルという強みを生かした豊富なコンテンツに加え、自分流にカスタマイズしつくした“ホーム”にはそれなりに満足していたし、住みなれた土地をわざわざ引越す予定はしばらくは考えていなかった。
しかし今回「物は試し」という軽いスタンスで使ってみた「iGoogle」は、その住みなれた土地を離れたくなるほどのポテンシャルを有していた。*1「すごい!!」と皆が感動しながらも普段はあまり利用しない「Google Earth」より、はるかに大きな影響力を「iGoogle」は我々にもたらそうとしている。
みなさんは、自宅のPCでブラウザを開いたとき、最初に表示されるページはどこだろうか?おそらく多くの人はYahoo!などのポータルサイトか、Googleなどの検索エンジンと答えるだろう。最近ではSNSをスタートアップにする人も多いかもしれない。ちなみに自分の場合は先ほど述べた「My Yahoo!」である。*2まずはそこでメールやニュース、株価等をチェックし、身の回りや世の中の動向を把握する。また、必要ならば電車の乗り換え検索などもそこで済ませる。こうして一通りネットに潜る準備を整えた後、mixiなりニコニコ動画なり2ちゃんねるなり(他にも色々あるが)を巡回していく。
こうした一連の過程で必ず立ち寄るのはもちろんスタートアップページである。広大なネット上のどこへ出かけるにしても、必ずこのページだけは最初に通るのだ。まさしく情報のゲートウェイ、「ポータル」である。目新しいサービスは片っ端から覗いてみる自分ではあるが、ネット上の“ホーム”だけはころころと代える気にはならない。
ただ、iGoogleそんな私の“ホーム”を、不覚にも代えてしまいたくなるほどの魅力的な空間だった。“ホーム”が変わるということは、私自身のネット行動が根本的に変わるということだ。
そう、まんまとGoogleの思惑に自ら嵌っているのである。

完全体へと進化の道を歩むGoogle

Googleで検索製品およびユーザーエクスペリエンス担当バイスプレジデントであるMarissa Mayer氏は、「パーソナライズはGoogleが成し遂げた最も大きな進歩の1つ」と述べた。
この発言は真であろう。Googleの目指すところが「世の中のありとあらゆる情報をGoogleを通じて個人が調べられること」だとすれば、個別にカスタマイズされた“ホーム”たる玄関口までをGoogleが用意するのは必然の流れだ。これまでGoogleはブラウザに装備されたGoogleツールバーによって代替してきたが、それでは「まだぬるい」というところだろう。
iGoogleが人々の“ホーム”を独占できれば、ますますGoogleという存在は完全体へと近づいていく。その理由を以下に述べる。

Googleアカウント人口の増加

まず、iGoogleを利用するためには当然ながら個人情報と結び付けられた「Googleアカウント」が必要になる。つまり、iGoogleを開いた瞬間から、すべての検索行動がGoogleに覗かれ*3記録されている状態になる。
これはGoogleにとってより有益な情報を収集できる一方で、我々にとっての利便性ももたらしてくれる。そのひとつが「パーソナライズド検索」である。以下にこれに関する説明を引用する。

パーソナライズド検索は、ユーザーの検索履歴を元に、よりユーザーにマッチした検索結果を提示する技術だ。簡単に言うと、動物に関する検索を日々行う事が多いユーザーが「キリン」と検索した場合、「飲料メーカーのキリン」ではなく「動物のキリン」に関する情報が優先的に上位表示される仕組みだ。2007年2月より、Google アカウントを新規に取得したユーザに対しては、このパーソナライズド検索が標準で有効となっている。(japan.internet.comの記事より)

これにより、我々は以前よりさらに精度の高い検索結果を得られる可能性が高くなる。また、検索履歴も蓄積されるので、履歴から物を調べなおすこともできる。この機能はブラウザにも標準装備されているものの、検索した語句もセットになって表示される分、使い勝手は格段に良い。
検索結果の蓄積は、Googleにとってもさらに精度の高いアドワーズ広告の配信を可能にするだろう。
また、これはあくまで想像だが、iGoogleに追加したコンテンツからユーザーの嗜好を読み取り、パーソナライズドされた広告配信を、iGoogle画面に表示するようになるかもしれない。

他のGoogle関連サービスとのシナジー効果

iGoogleは既存のGoogle関連サービスとのシナジー効果も最大限発揮するだろう。
【導入編】でも述べたように、iGoogleでは「ガジェッド」と呼ばれるコンテンツを追加していく事によってカスタマイズできる。このガジェッドは様々な作り手が参入しているが、もちろんGoogleで提供するサービスも主要なガジェットとして含まれる。ユーザーのホームにそれらサービスが配置されれば、これまで以上の頻度で利用されることは間違いない。もちろん、それらの履歴はアカウント情報とセットで記録されていくことも見逃せない。

「時間」「空間」「個人」情報の融合

iGoogleのユニークなサービスのひとつに、「時間によって変わる背景」がある。例えば今私はテーマを「Berch」に設定しているのだが、太陽の位置が時間の経過と共に変わっていく。このようなサービスはPCや携帯電話といった媒体では特に珍しくもないのだが、WEBの中でこれを再現しているのは新鮮に感じた。ただ、このサービスの本質は単に人々の目を楽しませる為だけではないことは明らかだ。
←時間の経過と共に太陽の位置が変わる背景
おそらく、iGoogleが目指すものは「時間」「空間」「個人」のそれぞれの情報を融合し、解析した上で生み出す、究極のパーソナライズドサービスの提供だろう。そのサービスとは検索であり、広告であり、RSS配信である。そうやって提供したサービスはまた新たな情報をGoogleにもたらし、次の開発に結びつけるというスパイラルが生まれていく。
iGoogleは、Googleを完成系へと進化させるための大きな仕掛けである。それがわかっていながら使ってしまう(使わせてしまう)ところに、Googleの凄さと一抹の不気味さを感じてしまう。

追記 自動更新している模様

ときどきエントリーを書きながらブラウザが挙動不審な動きをすると思ったら、iGogleは自動でデータを更新しているみたいです。う〜ん、チャットじゃないんだからそこまでのおせっかいは迷惑かも・・・。

*1:細かなところを挙げれば検索結果を新規に展開したり、Google内のどんなページからもホームに戻れるようになれば、なお使い勝手は良くなるはずだ。

*2:検索だけならGoogleツールバーがあるので事足りる

*3:語弊がないように正確にいうと、実際に監視してデータを蓄積しているのは、あくまでGoogleのコンピュータシステムであり、人間が監視しているわけではない。もちろん後でGoogleのなかの人に覗かれる可能性は皆無ではないだろうが・・・。