インターネット広告の短期的予測

電通総研、2007年から20011年までのインターネット広告費の試算結果を発表
電通総研は、2007年から2011年までのインターネット広告費の試算結果を発表した。固定ネット広告費、モバイル広告費、検索連動広告費を併せたインターネット広告費が2011年には全体で7,558億円となり、5年間で2006年の2倍以上の規模に拡大すると予測している。

伸び続けるインターネット広告費とその中身

若者の新聞離れ、TV離れが多くなっていると言われる昨今、新しいメディア媒体としてインターネットに広告費が流れるのは自然な流れかもしれない。ただ一口にインターネット広告と言っても、大きく分けるとその中身は固定ネット広告、モバイル広告、検索連動広告の三つに分けられる。

1.固定ネット広告「リッチメディア広告の広がり」

主にPC環境でネットサイトを閲覧したときに表示される広告で、バナー広告、テキスト広告、リッチメディア(簡易動画)広告、ストリーミング広告(インターネットCM)、企画広告、Eメール広告などがある。
これから特に増えるだろうと予想されるのがリッチメディア広告である。これまでの固定ネット広告はバナー広告やテキスト広告がメインで、TVCMほどの求心力はないとの指摘がされてきたが、リッチメディア広告では従来のテレビCM用に作られた映像をそのままネットで流すことが出来るので、テレビと遜色ない広告効果が期待できる。また、最近ではYahoo!動画などの動画配信や、YouTubeなどの動画投稿サイトが増えているため、それらの視聴前後に短い動画CMなどをはさむなどの手法も多くなるだろう。
これらリッチメディア広告の背景には、ユーザーが所有するPCスペックの向上、ブロードバンド環境の整備などが背景としてある。

2.モバイル広告「最も高い伸び率」

インターネット広告費中、最も高い成長率を示すだろうと予想されているのがモバイル広告費である。電通総研によると2006年比で3.3倍程度になるとされている。
この背景として、まずひとつに3Gの普及、パケット定額制加入者の増加で、今後確実にモバイルインターネット利用人口が増加することが挙げられる。
二つ目に高速通信化である。つい先日もドコモが3・5G対応のパナソニック製端末「P903iX HIGH-SPEED」を発売するなど、3.5世代のHSDPA通信に対応した携帯も次々にリリースされている。今後もさらにその先の4G、5Gといったように、携帯電話の高速通信化は携帯キャリア各社の方向性としては一致しており、いずれPCと遜色ない快適なインターネット通信が可能になる。そうなったとき、携帯でもリッチメディア広告が浸透していくことは間違いないだろう。また、新携帯には「ワンセグ」という強力なメディアが標準装備されていることも見逃せない。
三つ目にはこれまで携帯キャリアが牛耳っていたモバイル公式サイトの事実上の「自由化」である。auが公式サイトでGoogle検索を導入したのはその象徴的な出来事だが、これによってモバイルユーザーはこれまで囲い込まれてあった「狭い世界」を抜け出して、PCと同じような広大なネット空間に飛び出す手段を得る事となった。これにより携帯サイトにもPCサイトのような「0円サービス」のモデルが普及していくことだろう。なぜなら携帯サイト自由化によって客が流れるようになった勝手サイトは、集客の武器として必ず0円サービス使うからだ。モバゲータウンはその良い例である。これまで携帯ゲームは有料なのが当たり前だった中、無料でそれを提供することでアクセスを集める事に成功した*1こうなると既存の公式サイトも従来の課金型ビジネスモデルからの変換を迫られざるを得ない。そして無料モデルの基盤となるのは言うまでもなく広告費である。

3.検索連動広告「モバイル検索での伸びが期待される」

検索連動広告とは検索ワードに応じて広告を掲出する仕組みの広告である。検索連動広告の代名詞とも言うべき存在がGoogleAdWordsである。この仕組みはすでにPCの分野では広く浸透しているので、それほどの急激な進展は予想しにくいが、モバイル検索においてはまだまだ伸びしろは多いと言える。現時点では、モバイルを使って日常的に検索を利用しているという人は少ないのではないだろうか?

インターネット広告ならではのマーケティング


インターネット広告には従来型のマスマーケティングには出来なかった、さまざまな可能性が潜んでいる。
従来型のマスマーケティングにおける媒体効果は「とにかくたくさんの人の目に留まること」が最も重要な要素であった。そのため広告費の配分もラジオ、雑誌、新聞、TVといった順に、大衆がより多く目にする機会が多い媒体ほど多くの広告費が投じられる。もちろんこれはインターネット広告においても当てはまるが、問題はネットメディアはそれぞれユーザーの属性が細かく分かれていることにある。例えばYahoo!などの大型ポータルサイトのトップページでは、従来型のマーケティングモデルが通用するかもしれないが、それ以外のページ、例えば株価情報のページに子供向けおもちゃの広告をだしても効果は見込めないことは想像に易い。
そのためインターネット広告ではターゲッティングの要素が重要となってくるが、一方でインターネットではそれをシステム化して自動的に最適なターゲッティングを行ったうえで表示させることも可能となる。例えばSNSでは性別、年齢、職業等がすべてデータベース化されているので、より的を絞った、パーソナライズドされた広告配信が可能となる。これはつまり、とにかくたくさんの人の目に触れるべく多額の広告宣伝費をつぎ込まずとも、それと同等の広告効果がターゲッティング広告では生まれるということだ。ターゲッティング広告はそういった提供側のメリットもあるが、消費者にとってもニーズに近い広告が配信されるので、まったく見当違いの案内に辟易することなく、知りたい情報をキャッチできるという受け手側のメリットもある。またこの他にも商品にファンをつくり囲い込む「コミュニティマーケティングや、口コミ効果を期待するバイラルマーケティングなどもインターネットと馴染みやすい。
こうしたインターネット広告ならではの長所や特徴も、今後ネット広告費が増大すると予想されるひとつの要因となっているだろう。

*1:ただし、そのあとでしっかり課金の仕組みを作っているのだが・・・。