“人”専門の検索サービス「Spock.com」

「人物」に特化した検索

ネットを利用している人なら、誰もが一度は自分の名前や知人の名前を検索して事があるのではないでしょうか?そんな「人」に対する検索ニーズをそのまま形にした面白いような恐いようなサービスが現れました。

【Web 2.0 Expo】「飲酒運転者」のトップが副大統領? 人物検索「Spock.com」がお披露目 -(IT Pro
「arrested for drunk driver(飲酒運転で逮捕されたドライバー)と検索すると,チェイニー副大統領がトップに表示される。ブッシュ大統領より上なのは,チェイニー副大統領が2度逮捕されたからだ」(Spock.comのJay Bhatti共同創業者)──。人物に対して付けられた「タグ」(メタ・データ)を基にした人物検索エンジン「Spock.com」の詳細が,4月16日(米国時間)の「Web 2.0 Expo」で明らかになった。

Spock.comはまだベータ段階で、我々がすぐに利用を始める事はできません。まずはメールアドレスや名前を登録して、週間の招待メールを受け取りログインできれば使うことができるらしいので、さっそく自分も登録だけしてみたのですが、個人情報を集めているサイトだけあって正直言って一瞬躊躇してしまいました。ちなみに検索の仕組みとしては以下のようになっています。

人物の情報を「Wikipedia」やソーシャル・ネットワーキング・サイトの「LinkedIn」や「Facebook」で調べ,システムが自動的に人物に対して様々な「タグ」を付加する。そして,例えば「blogger」と検索すると,「blogger」というタグが付けられた人物が優先的に検索結果に表示される。システムが自動的につけた「タグ」は,ユーザーがその成否を「投票」によって修正する仕組み。こうすることで,タグ情報がより正確になるという。

本来クローズドなはずのSNSから情報を引き出すのはちょっと反則な気も・・・。でもあくまで非公開に設定してある登録情報までは開示しないそうです。タグを自動的に付加するシステムや、ユーザー評価によってその精度を高める仕組みなどは、技術と人力の融合といった感じですごい気がしますが、なんせ扱う情報が「人」というデリケートかつプライバシーに関わるものなので、個人的には漠然とした不安を感じます。
実際、すでも米国のウォール・ストリート・ジャーナルではこのような記事が書かれています。

ネットの無料「人探し」に不安の声
SNSのプロファイル、ブログ、Webサイトなどから個人の情報を無料で探せるサービスが登場している。こうしたサービスが個人情報の窃盗犯やストーカーに悪用されるかもしれないと懸念する声もある。

果たしてそれは必要な情報か?〜便利さ、簡単さゆえの問題点

この無料人物検索サービスがここまで話題になるのも、それだけ人が人の情報に興味を持っている証拠だと思います。週刊誌やワイドショーを好んで見る人は多いですからね。他人の私生活を覗い何が面白いのか自分には良く理解できませんが、「パパラッチ」が頭の下がるような執念さで芸能人を追い続けるのも、結局はそれを知りたい人が世の中にたくさんいるからです。しかしパパラッチと言えどその労力の対象は通常有名人だけです。
それに対して人検索では誰もが簡単にパパラッチになれる危険性を孕んでいます。パソコンの前でほんの数秒キーボードを打つだけで、何の労力も支払わず他人のプライバシーを覗けるようになるかもしれません。本来は必要のない興味本位の個人情報でも簡単に引き出せてしまう便利さこそが、逆に一番の問題点のような気がするのです。
このシステムで一番恐いのは、自分のコントロールできないところで、勝手に情報が収集され、どんどん関連付けられていくことです。「機械プログラムと人によって着々と個人情報が収集、編集されていく・・・。」考えただけで恐ろしいと思いませんか?例えば同じように個人情報が集まるSNSなら「公開範囲」の設定である程度コントロールできるし、もし相手が自分の情報を探ろうとすれば、「足あと」の機能などでそれを知る事ができます。問題があればそれをブロックすることも可能です。つまり、SNSにおいて他人の情報を知ろうとすれば、ある程度は自らの情報を差し出すリスクも背負うことになるのです。*1
その点、今回のSpock.comような人物検索ではノーリスクな上に労力も必要ないので、誰もあずかり知らぬところでどんどん個人情報が流出していく可能性があるような気がしてなりません。とりあえず、米国でどういった現象が起きるのか、注意深く見て行きたいと思います。

*1:もちろん抜け道や盲点はありますが、少なくとも各事業者はそれを防ぐための技術的、規則的な枠組み作りは進めているはずです。